赤ちゃんが母乳を嫌がるときに読むガイド:原因と具体的な対策
赤ちゃんが急に泣く、のけぞる、口をつけてもすぐ離す、あるいはまったく授乳を受け付けない。そんな姿を見ると、「昨日までは飲めていたのに、どうして?」と不安になり、拒絶されたように感じることもあるでしょう。
まず深呼吸してください。赤ちゃんが授乳を嫌がることは珍しくなく、多くは一時的なものです。 すぐに卒乳したという意味でも、お母さんのやり方が悪いという意味でもありません。
母乳の出る勢いが強すぎる、反対になかなか出てこない、哺乳瓶に慣れた、耳や口の中が痛いなど、赤ちゃんが母乳を嫌がる理由はさまざまです。大切なのは、拒否する場面の共通点を探すことです。授乳の始めだけ泣くのか、片方の乳房だけ嫌がるのか、哺乳瓶のあとに起こるのか、人の多い場所で落ち着かないのか。こうした様子が、母乳拒否の原因を考える手がかりになります。
母乳拒否で見られやすい様子
赤ちゃんの月齢や性格によって、母乳拒否の現れ方は異なります。たとえば、次のような様子が見られることがあります。
- 授乳の姿勢にすると泣く、体を反らせる、力を入れて嫌がる
- くわえてもすぐに乳首を離し、それを何度も繰り返す
- 乳房から顔をそむける
- 数秒だけ吸って、怒ったように泣き出す
- 母乳が出始めると、むせる、せき込む、苦しそうにする
- 眠いときは飲めるのに、起きているときは嫌がる
- 哺乳瓶は飲むのに、母乳は飲みたがらない
一度の授乳がうまくいかなかっただけなら、深刻に考えすぎる必要はありません。赤ちゃんにも機嫌が悪い日や、飲む気分ではない時間があります。ただし、授乳を嫌がる状態が繰り返される場合は、考えられる原因を一つずつ確認していきましょう。
哺乳瓶を始めたあとの「流量の好み」
哺乳瓶を使い始めてから起こりやすいのが、ミルクの出る速さに慣れてしまうことです。特に穴が大きい乳首を使っていたり、哺乳瓶を立てて飲ませていたりすると、赤ちゃんはあまり力を使わなくてもミルクを飲めます。
一方、母乳は授乳中ずっと同じ勢いで出るわけではありません。赤ちゃんは吸いながら射乳を待ち、ときには少し頑張って飲む必要があります。
蛇口から勢いよく水が出ることに慣れたあと、ストローで飲むように言われたら戸惑うかもしれません。それに近い状態です。
哺乳瓶の流量に慣れた赤ちゃんは、最初は勢いよく吸いついても、母乳が出始める前に怒ってしまうことがあります。反対に、授乳の前半は問題なく飲めても、出方がゆるやかになった後半に不機嫌になる場合もあります。
哺乳瓶を使いながら母乳を続けるコツ
必ずしも哺乳瓶を完全にやめる必要はありません。哺乳瓶での飲み方と授乳との違いを、できるだけ小さくすることが目標です。
次の方法を試してみてください。
- 低流量タイプの乳首を選びます。月齢表示はメーカーごとに差があるため、表示だけでなく、赤ちゃんがむせずにゆっくり飲めているかを見て判断します。
- ペースド ボトル フィーディング やり方を取り入れます。赤ちゃんをやや起こした姿勢に抱き、哺乳瓶は水平に近い角度で持ちます。数回吸ったら少し休む時間をつくり、乳首の中が常にミルクで満たされないようにします。
- 飲み切ることを急がせず、赤ちゃんのペースに合わせます。
- 空腹で激しく泣く前に乳房を含ませます。お腹が空きすぎていると、射乳を待つことが難しくなります。
- 機嫌のよいとき、眠りかけ、昼寝から目覚めた直後などに授乳してみます。日中は拒否しても、うとうとしていると驚くほど落ち着いて飲む赤ちゃんもいます。
混合栄養をしている場合、復職後に搾乳を続ける場合にも、ペースドボトルフィーディングは役立ちます。哺乳瓶でも赤ちゃんの飲むペースを尊重でき、哺乳瓶から母乳を嫌がる状況を和らげる助けになります。
乳首混乱と、吸い方の違い
「乳首混乱」という言葉が使われることがあります。最近は「哺乳瓶の流量への慣れ」や「乳房と哺乳瓶の好み」と表現されることもありますが、哺乳瓶と乳房の切り替えに戸惑う赤ちゃんがいるのは事実です。
授乳と哺乳瓶では、赤ちゃんが口や舌を使う動きが異なります。母乳を飲むには、大きく口を開けて乳輪まで深くくわえ、舌をリズミカルに動かす必要があります。一方で哺乳瓶の乳首によっては、浅く吸うだけでもミルクが出てくることがあります。
まだ吸い方を練習中の小さな赤ちゃんにとって、二つの飲み方を使い分けるのは簡単ではありません。乳首混乱対処法としては、乳房を「安心して飲める場所」に戻していくことが大切です。
赤ちゃんが再び乳房を受け入れやすくする工夫
- 特に授乳が軌道に乗るまでの時期は、可能な範囲で哺乳瓶の回数を減らします。医学的に補足が必要な場合は、産院の助産師、小児科医、自治体の保健センター、母乳相談室に相談しましょう。
- 哺乳瓶が必要なときは、低流量の乳首とペースドボトルフィーディングを続けます。
- スキンシップ 授乳を意識します。お母さんは楽な姿勢で寄りかかり、赤ちゃんをおむつだけの状態で胸に抱きます。必要なら薄手のタオルをかけてもよいでしょう。このとき、必ず飲ませようとしなくて大丈夫です。乳房のそばで心地よく過ごす時間が、安心感につながります。
- 泣く前の空腹サインを見て授乳します。もぞもぞ動く、口を探すようにする、手をしゃぶる、唇をもぐもぐさせる、といった様子が目安です。
- 必要に応じて、専門家の助言を受けながらニップルシールドを一時的に使う方法もあります。ニップルシールドの使い方はサイズや装着位置が重要で、合わないものは母乳の移行量を減らすことがあります。自己判断で長く使い続けず、助産師などに確認してもらいましょう。
- くわえさせる前に、乳首やニップルシールドに母乳を数滴つけます。すぐに味がすると、ためらっていた赤ちゃんが吸い始めることがあります。
哺乳瓶から母乳へ戻るまでには、数日かかることもあれば、もう少し時間が必要なこともあります。泣いている赤ちゃんを無理に乳房へ押しつけると、母乳拒否が強まることがあります。焦らず、低いプレッシャーで続けましょう。
痛みや不快感が隠れていることもある
赤ちゃんが授乳を嫌がるのは、「飲みたいけれど痛い」というサインかもしれません。
中耳炎
中耳炎があると、吸ったり飲み込んだりする動きで耳の圧が変化し、痛みが強くなることがあります。いつもより片方の乳房だけ嫌がる、耳に手をやる、機嫌が悪い、発熱しているといった様子があれば注意が必要です。
歯ぐずりの時期にも耳を触ることはあるため、耳を引っ張るだけで中耳炎とは断定できません。ただし、体調不良と同時に授乳の様子が急に変わった場合は、小児科で診てもらいましょう。
受診までの間は、赤ちゃんの上体を少し起こした姿勢で授乳すると楽に飲めることがあります。
歯ぐずり・歯の生え始め
歯が生える時期には個人差がありますが、歯ぐきの痛みで乳首をくわえるのを嫌がることがあります。噛む、すぐに離すといった行動も見られます。
授乳前に、清潔な冷たい歯固めを使うと落ち着く場合があります。痛み止めを検討する場合は、月齢や体重に合ったものを小児科医・薬剤師に確認してください。
口腔カンジダ症
口の中にカンジダが増えると、吸うこと自体が痛くなることがあります。舌、頬の内側、歯ぐきに、こすっても取れにくい白い苔のようなものが付いていないか確認しましょう。
お母さん側にも、乳首がヒリヒリする、つやが出る、かゆい、授乳中や授乳後に痛むといった症状が出ることがあります。親子でうつし合うことがあるため、自己判断で済ませず、小児科や産婦人科、助産師に相談して治療を受けることが大切です。
胃食道逆流症・吐き戻しによる不快感
吐き戻しが多い赤ちゃんは、最初は勢いよく飲んでも、数分後に背中を反らす、しかめ面をする、せき込む、乳房を離して泣くことがあります。しゃっくりが多い、横になると苦しそう、といった様子も手がかりになります。
乳児の吐き戻し自体はよくあることです。ただし、強い痛みで泣き続ける、体重が増えない、緑色の嘔吐物が出る、吐いた物や便に血が混じる場合は、早めに医療機関を受診してください。
この場合は、無理に飲ませ続けることより、原因への対応が先です。痛みが落ち着くと、再び母乳を飲めるようになる赤ちゃんは少なくありません。
母乳が多すぎる・勢いよく出すぎる
母乳拒否は、母乳が足りないときだけに起こるわけではありません。出る量が多すぎる、射乳が勢いよく起こることが原因になる場合もあります。
母乳の勢いが強いと、赤ちゃんはゴクゴク飲み込んでむせたり、せき込んで乳房を離したりします。口の端から母乳がこぼれ、苦しそうにすることもあります。毎回この状態が続くと、授乳そのものを苦手に感じてしまうことがあります。
母乳の勢いをやわらげる方法
姿勢を少し変えるだけでも、飲みやすさが変わります。
- リクライニング授乳を試します。お母さんが背もたれなどにもたれて半分寝た姿勢になり、赤ちゃんをうつぶせ気味に胸の上へ乗せます。重力の影響で、母乳の流れがゆるやかになりやすい姿勢です。
- 胸が張っているときは、授乳前に少量だけ手で搾乳します。清潔な容器やガーゼに受けるとよいでしょう。
- 赤ちゃんが勢いよく飲み込んでいるときは、いったん休んでげっぷを促します。
- 赤ちゃんの体重増加が順調で、お母さんも苦痛がなければ、1回の授乳を片方の乳房だけで行う方法もあります。
母乳分泌が多い場合、一定時間は同じ乳房を飲ませる「ブロック授乳」を提案されることもあります。ただし、やりすぎると母乳量が減りすぎたり、乳腺炎や乳管の詰まりにつながったりすることがあります。国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)、助産師、母乳外来などの支援を受けて進めると安心です。
母乳が出にくい・射乳が遅い
反対に、母乳が出始めるまで待てずに怒ってしまう赤ちゃんもいます。数回吸ったあとで泣き出すと、お母さんはつらく感じるかもしれません。しかし、赤ちゃんがお母さんを嫌がっているわけではありません。
疲労、ストレス、痛み、上の子の世話をしながらの授乳などは、射乳反射に影響することがあります。母乳を出すホルモンは、心身の状態に左右されやすいためです。
母乳が出始めるのを助ける工夫
- 赤ちゃんが吸っているのに飲み込む音が少ないときは、乳房圧迫を行います。乳房を手でやさしく包むように圧迫し、母乳の流れを促します。
- 授乳前や授乳中に、乳房をやさしくマッサージします。
- 待つのが苦手な赤ちゃんには、授乳前に1~2分ほど搾乳して、母乳が出始めてからくわえさせる方法もあります。
- 吸着が浅くないかを確認します。母乳量が足りていても、浅いくわえ方では十分に飲み取れません。
- 赤ちゃんの欲しがるサインに合わせて、こまめに授乳します。母乳は飲まれる回数が増えるほど、分泌を維持しやすくなります。
母乳が足りないかもしれないと心配なときは、胸の張りや柔らかさだけで判断しないでください。おしっこの回数、体重の増え方、授乳中に飲み込む音があるかを見ます。自治体の乳幼児健診、保健センター、母乳外来などで体重を確認し、実際の授乳を見てもらうと、赤ちゃんが母乳を嫌がる理由を見つけやすくなります。
生後6~8週ごろに起こりやすい「気が散る」時期
生後6~8週ごろになると、赤ちゃんは急に周りの世界に興味を向け始めます。犬の鳴き声、テレビの音、食器棚を閉める音、窓から入る光。何もかもが気になって、授乳に集中できないことがあります。
日中は少しの音で顔をそむけ、吸っては離しを繰り返すのに、夜中は静かなためしっかり飲む。そんなケースもよくあります。
次のような工夫を試してみましょう。
- 薄暗く静かな部屋で授乳する
- テレビを消し、スマートフォンは手元から離す
- 生活音を避けにくい場合は、一定の環境音を小さく流す
- 1回を短めにして、授乳回数を増やす
- 安全と姿勢に十分注意しながら、抱っこひもで授乳しやすい場合は活用する
- 昼寝の前後、夜間など、眠気があるタイミングを利用する
気が散って授乳を嫌がる時期は、お母さんにとって疲れるものです。それでも、多くは発達に伴う一過性の変化であり、授乳の終わりを意味するものではありません。
授乳ストライキと卒乳の違い
急に母乳を受け付けなくなる状態は、「授乳ストライキ」や「母乳ストライキ」と呼ばれることがあります。風邪などの体調不良、歯ぐずり、生活リズムの変化、授乳中に大きな音がして驚いた、哺乳瓶の乳首を変えた、お母さんの香水やボディソープの香りが変わったなど、きっかけはさまざまです。はっきりした原因が見つからないこともあります。
授乳ストライキと卒乳は同じではありません。自然な卒乳は、一般的にもう少し大きくなってから、離乳食やほかの飲み物が増えるなかで、ゆっくり授乳回数が減っていく形で進みます。小さな赤ちゃんが突然母乳を拒否した場合、「もう母乳はいらない」という意味であることはほとんどありません。
授乳ストライキの間は、次のように対応します。
- 乳房は差し出しても、無理強いはしません。激しく泣いているときは、まず抱っこなどで落ち着かせます。
- 眠りかけ、お風呂のあと、抱っこの最中、ゆっくり歩いているときなど、リラックスしやすい場面で試します。
- 「抱っこしたら必ず授乳」ではなく、飲まなくてもよいスキンシップの時間を十分につくります。
- 母乳分泌を保ち、胸の張りを防ぐために、搾乳や手搾りを定期的に行います。
- 必要な場合は搾乳した母乳を与えます。哺乳瓶を使うなら、低流量乳首とペースドボトルフィーディングを取り入れます。
- 母乳拒否が1日以上続くときは、早めに助産師や母乳相談室などへ相談します。
多くの授乳ストライキはいつか終わります。家の中が静かな夜中、誰も頑張らせようとしていないときに、ふっと飲み始めることもあります。
相談・受診の目安
赤ちゃんが24時間以上、繰り返し母乳を拒否する、おしっこの回数がいつもより明らかに少ない、体重が増えない、母乳量が心配といった場合は、出産した施設の助産師、小児科、自治体の保健センター、母乳外来、IBCLCなどに相談してください。
月齢の低い赤ちゃんの発熱、いつもと違ってぐったりしている、呼吸が苦しそう、脱水が疑われる、何度も吐く、緑色のものを吐く、起こしても反応が鈍いといった症状がある場合は、早めの医療相談が必要です。夜間や休日は地域の小児救急電話相談「#8000」も利用できます。緊急性が高いと感じるときは119番に連絡してください。
母乳拒否は、大きな後退のように感じられるかもしれません。でも多くの場合、それは授乳生活の終わりではなく、短い足踏みの時期です。赤ちゃんの様子を観察し、母乳分泌を守り、できるだけプレッシャーを減らして、早めに周囲の手を借りましょう。お母さん一人で抱え込む必要はありません。
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