先月まで問題なく飲めていた粉ミルクなのに、急に赤ちゃんが苦しそうにしたり、ガスが増えたり、哺乳を嫌がったりすることがあります。寝不足が続くと、すぐにミルクを変更したくなるかもしれません。
ただし、新生児期から乳児期の赤ちゃんは消化機能が未発達です。うなったり、おならが出たり、便の状態が日によって変わったりすることは珍しくありません。短い間隔で粉ミルクを替え続けると、何が原因なのか余計に分かりにくくなります。
基本は、一般的な育児用ミルクをある程度の期間試し、本当に気になる症状があるかを見極めることです。特殊なミルクへ替える前には、小児科の医師にミルクの相談をしましょう。
新しい粉ミルクに替えた直後は、赤ちゃんの体が慣れるまで時間がかかります。特に生後数か月は腸の働きが発達途中で、ガス、いきみ、便の回数や硬さの変化はよく見られます。
軽い不調であれば、目安としてミルクは2週間ほど様子を見ることがすすめられます。粉ミルクをいつ替えるか迷うときは、授乳量、吐き戻し、便、おしっこの回数、泣く時間、皮膚の変化を簡単に記録しておくとよいでしょう。小児科を受診した際にも、症状の経過を伝えやすくなります。
ただし、次のような症状が続く、または強い場合は、2週間を待たずに医療機関へ相談してください。
2週間以上続く強いガスや不機嫌
赤ちゃんのガスがミルクの後に少し増える程度なら、必ずしも異常ではありません。しかし、ほとんど毎回の授乳後に足を引きつけて激しく泣く、明らかに痛がる、なかなか落ち着かない場合は相談が必要です。
吐き戻しではない、繰り返す嘔吐
授乳後に口元から少量のミルクがたれる程度の吐き戻しはよくあります。一方で、勢いよく何度も吐く、ほぼ毎回の授乳後に赤ちゃんがミルクを嘔吐する場合は、単なる吐き戻しと決めつけないでください。
便に血や粘液が混じる
ミルク便に血が見られる、ミルク便に粘液が何度も混じるといった症状は、早めに小児科へ連絡したいサインです。食物アレルギーなどが関係することもあります。
強い発疹、悪化する湿疹
赤ちゃんの乾燥肌や軽い乳児湿疹は珍しくありません。しかし、全身にじんましんが出る、顔が腫れる、発疹が広がる、湿疹がなかなか改善しない場合は注意が必要です。ミルクによる皮膚の発疹だけでなく、ほかの原因も含めて診てもらいましょう。
便秘や下痢が続く
1回だけ硬い便が出た、数日ゆるい便が続いたというだけでは、ミルクが合わないとは判断できません。ミルクで便秘や下痢が長引く、飲む量や体重増加に影響している場合は受診を検討します。
授乳を一貫して嫌がる
赤ちゃんのミルク拒否が一時的ではなく続く、飲むたびに苦しそうにする、元気がない、おしっこが減っている場合は、早めに医師へ相談してください。
これらはミルクを変えるサインになることがありますが、症状だけで原因を断定することはできません。胃食道逆流、かぜや胃腸炎、授乳量が多すぎること、哺乳びんの乳首が合わないことなどでも、ミルク不耐症やアレルギーに似た様子が見られます。
赤ちゃんの機嫌や飲む量は毎日同じではありません。よく飲む日もあれば、いつもより少ない日もあります。1日だけの変化で新しい缶を開ける必要はないことがほとんどです。
次のような理由だけで、安易に粉ミルクを変更するのは避けましょう。
少量の吐き戻し
少しミルクを戻しても、機嫌がよく、体重が増え、おしっこが出ているなら、通常はミルク変更の理由にはなりません。
ときどき不機嫌になること
赤ちゃんが泣く理由は、眠い、抱っこしてほしい、げっぷが出ない、刺激が多くて疲れた、空腹などさまざまです。粉ミルクだけが原因とは限りません。
1日だけの便の変化や不調
予防接種のあと、生活リズムの変化、軽い体調不良、成長スパートなどで、飲み方や便の状態が変わることがあります。
SNSや口コミだけを根拠にすること
知人の赤ちゃんに合ったミルクが、自分の赤ちゃんにも合うとは限りません。月齢や体質、症状によって適した対応は異なります。
緊急性のある症状がなければ、短期間で何度も銘柄を替えないことが大切です。ミルクを替えるたびに一時的なガスや便の変化が起こり、どのミルクが合っているのか判断できなくなります。
大きなミルク変更、とくにアレルギー用ミルク、無乳糖ミルク、とろみのあるミルクなどを使う前には、小児科の医師、助産師、保健師にミルクの相談をしてください。SNSのチェックリストだけを見て、牛乳たんぱくアレルギー、乳糖不耐症、逆流症などと自己判断するのは避けましょう。
日本では、かかりつけ小児科のほか、自治体の保健センターや乳幼児健診で保健師・助産師に相談できます。生後3か月未満で元気がない、飲みが悪い、おしっこが減ったと感じるときは、早めの相談が安心です。
次の症状がある場合は、すみやかに医療機関へ連絡してください。
夜間や休日で受診すべきか迷う場合は、地域によって利用できる小児救急電話相談「#8000」も役立ちます。呼吸が苦しそう、唇が青い、意識がはっきりしないなど緊急性が高い場合は、119番に連絡してください。
多くの赤ちゃんには、一般的な育児用ミルクで十分です。医師からミルク変更を勧められた場合は、症状や目的に合った種類を選ぶ必要があります。パッケージに「おなかにやさしい」と書かれていても、アレルギー用ミルクとは限りません。
消化に配慮したミルクには、牛乳たんぱく質を細かく分解したものがあります。ガスが多い、便秘気味、疝痛のように泣くといった軽い消化の悩みに対して、医師や専門職から提案されることがあります。
ただし、牛乳たんぱくアレルギーが確認されている赤ちゃんには適しません。たんぱく質は小さくなっていても、完全になくなっているわけではありません。
牛乳たんぱくアレルギーが強く疑われる、または診断されている場合には、たんぱく質をより細かく分解した高度加水分解乳が使われることがあります。
症状によってはアミノ酸乳が必要になることもありますが、これは小児科医やアレルギー専門医と相談して決めるものです。医療用のミルクには医師の指示や処方が必要なものもあり、自己判断で使ったり中止したりしないでください。
大豆を原料とする乳児用ミルクは、乳糖不耐症や特定の食事上の事情などで検討される場合があります。ただし、牛乳たんぱくアレルギーの赤ちゃんの一部は大豆にも反応することがあります。
乳児期に本当の乳糖不耐症が起こることは多くありません。胃腸炎の後に一時的に乳糖を消化しにくくなる場合はありますが、自己判断で大豆ミルクや無乳糖ミルクに替えず、医師の診察を受けましょう。
吐き戻しや逆流が強い赤ちゃんには、ミルクにとろみをつけて胃から戻りにくくした製品が勧められることがあります。頻繁な嘔吐で機嫌、授乳、体重増加に影響が出ている場合に検討されます。
こうしたミルクは、作り方や乳首の選び方に注意が必要です。とろみによって便秘になりやすい赤ちゃんもいます。医療者から具体的な指示がない限り、哺乳びんに離乳食用のシリアルや市販のとろみ剤を加えないでください。
新しいミルクを使うことが決まったら、赤ちゃんの負担を抑えるために段階的に切り替える方法があります。一般的な粉ミルク同士を替える場合や、医師の了承を得て消化に配慮したミルクへ替える場合に向いています。
粉ミルクの切り替え方の一例は、次の7日間の方法です。
混ぜる場合も、それぞれの粉ミルクをパッケージの表示どおりに別々に調乳してから、清潔な哺乳びんで必要量を合わせます。粉の段階で異なるメーカーのミルクを混ぜたり、付属スプーンの量や湯量の比率を変えたりしてはいけません。
粉とお湯の割合は製品ごとに異なります。濃すぎる、または薄すぎるミルクは、赤ちゃんの体に負担となるおそれがあります。
赤ちゃんによっては一度に新しいミルクへ替えても問題ないことがあります。ただし、医療用ミルクを使う場合、アレルギーがある場合、嘔吐や逆流が強い場合は、必ず医師の指示に従ってください。
粉ミルクが変わると、便の色、におい、硬さが変化することがあります。便が少し緑っぽくなる、やや硬くなる、おならが目立つようになるといった変化は、数日程度なら珍しくありません。それだけで新しいミルクが合わないと判断する必要はありません。
便だけでなく、赤ちゃん全体の様子を見ましょう。落ち着いて飲めているか、おしっこが普段どおり出ているか、授乳と授乳の間に穏やかに過ごせるかが目安になります。
次のようなアレルギーや不耐の可能性がある症状が出たら、切り替えを続けずに医療機関へ相談してください。
ミルクアレルギーでは、皮膚、消化器、呼吸器にまたがって症状が現れることがあります。そのような場合は、自宅でミルクを次々に試すのではなく、医師の診察を受けてください。
最も多いのは、短い期間で何度もミルクを替えることです。心配な反応がない限り、赤ちゃんが慣れる時間を確保しましょう。頻繁なミルク変更は消化のリズムを乱し、原因の見極めも難しくします。
大豆ミルク、逆流対策用ミルク、アレルギー用ミルクなどへ、相談なしに替えることも避けたい点です。特殊なミルクは、より上位の製品というわけではなく、それぞれ特定の症状や目的に合わせて作られています。
赤ちゃんによくある行動まで、すべて粉ミルクのせいにしないことも大切です。夕方に泣きやすい、頻回に飲みたがる、うなる、しゃっくりをする、ときどき吐き戻すといったことは、乳児期にはよくあります。
不安が続くなら、その感覚を軽く見ないでください。夜中に何缶目かの粉ミルクを買いに行くより、かかりつけ小児科や自治体の保健師に授乳の様子を相談するほうが、解決につながることがあります。